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霧に沈む

  • 執筆者の写真: 威 高松
    威 高松
  • 2024年3月5日
  • 読了時間: 2分

更新日:2024年10月1日

「霧に沈む」

2/27(火)-3/10(日)

12:00-20:00


MEDIA SHOP

〒604-8031

京都府京都府京都市中京区中京区 大黒町44 VOXビル1F


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 2022 年 2 月の末に大学院を修了して、就職に失敗して彼女の就職先についていくかたち

で兵庫県加東市に引っ越すことになった。

 枚方、守口、富田林で生活してきた私は、霧に沈む加東で暮らしてもう 2 年になる。加東

は三草山、加東アルプスの山々に囲まれ、加古川が縦に流れ、中国道が横に走っている。街

の上には遠く山が被さり、景色がよく霞んでいる。

 自身のちからで選んだ訳ではない土地で、私の想定していた物事や目標ではないところ

で生きている。選びとれるような事があまりなかっただけなのかもしれない。選ぼうと思っ

ていなかったところにある豊かさに驚かされる。

 選ぶことは強力な位置から責任を持つ方法なのかもしれない。選ばなかったことにある

可能性を選べなくなることは、自身の可能性を貧しくすることと鶴見俊輔が書いていたこ

とをよく憶えている。

 道具、火を使わずに手や身体で鉄の板を曲げることで細かいことが出来ずに、かたちが限

られる。制作の方法としてここ 5 年はそうしている。

 振り返ってみれば、 おもうかたちは買うことが出来て、デジタルな場では手で触れること

が夢のように誤魔化されながらも現実が拡張されていく。そのような方法を選ぶことが出来る地点から考えると、制作そのものを貧しくしているということなのかもしれない。自身の手の余力を試して小さくまとめているだけなのかも

しれない。 過剰になれないやり方の中でカント的な快、 良いかたち、 良い作品を探している。

 今回の展示では在学中の頃の作品から、最近の作品まで鉄の板を曲げた今までの作品を網羅的に並べることで、取りこぼしてきたかもしれないちからをもう一度探してみたい。

 目の前の景色が春になるにつれて霞んでいく。霧に沈み、晴れていく日々の中で。


2024/02/26

高松威



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